<南風>高円宮杯全日本英語弁論大会


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 カラフルな看板の掲げられた「島尻地区スピーチコンテスト」に学校代表として訪れた私、そこでありがたく県大会進出が決まり、当時趣味だったトロフィーのコレクションが増えたと大喜び。数週間いつも通り恩師ミスター・ジョー先生と練習を続け向かった県大会…そこにあったのは堂々と記された「高円宮杯弁論大会沖縄県予選」でした。

 冗談なしに、とんでもない所に来たと思い、何が起きてるのかわからぬまま気づけばその手には全国大会の切符が! ですが喜んだのもつかの間、全国大会が中学最後の合唱コンクールの日と判明、合唱を楽しみにしていた私は弁論大会を棄権しますと言いだします。先生方のあんなに青ざめた顔を見たのは最初で最後です。

 しかし涙を流した他の参加者の事を考えてみてと言われ、何度も話し合い弁論大会に行くことを決意しました。そしてその決断にご褒美を神様がくれたのでしょうか、全国大会で奇跡的に優勝したのです。それに加えて、学年一まとまりがないと言われた私たちクラスが入賞し、感動したよ!と他クラスの先生から嬉(うれ)しい連絡まで頂きました。

 弁論大会は第60回記念の年で祝賀会に皇太子様がいらっしゃり、目の前でスピーチさせて頂きました。その時話したのはピアノが私の人生を救ってくれたという内容で、それを聞いた皇太子様、次はぜひピアノを聴かせて下さいと…。

 そして2017年の春、大学を首席で卒業し、皇居内桃華音楽堂で演奏する機会に恵まれ、10年越しに本当に皇太子様に聴いて頂ける日がやってきました。夢のような出来事で、その日は人生で一番高い集中力で弾けたのを覚えています。堂々と言えないような過ちもたくさんしてきたけれど、これだけは私が胸を張って言える唯一の物語です。
(下里豪志、ピアニスト)