<南風>ルワンダのラジオは今


社会
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 100日間で80万人が殺されたルワンダ虐殺から今年で25年。当時ルワンダから家族で福島へ避難してきたマリールイーズさん(54)の案内で首都キガリを回った。10月22日「ジェノサイド(虐殺)記念館」を訪ねた。入り口には、「忘れない、そして学ぶ」と書かれている。余りにも息苦しくなる虐殺の写真や展示物を見て、拝観した後はしばらく呼吸が荒くなり立てなかった。

 フツ族とツチ族、二つの部族の違いを決めたのは、鼻の高さだった。そして渡された身分証明書が生死を分けた。大きなラジオの写真の前でルイーズさんから悲しい事実を知らされた。「25年前のルワンダ虐殺に、ラジオが積極的に加担していた」と。当時、このような放送がひっきりなしに流れていた。

 「ツチの武装集団は、村人を装い身を隠している。隣のツチに気をつけろ。今こそ君たちの勇気を示す時だ。鎌や鉈(なた)を手に家を出るんだ。俺たちの強さを見せてやれ!」

 この時のラジオの過ちを教訓として、後世に平和と命の大切さを伝え続けているラジオ番組がある事を知った。その番組を制作している会社「ラべネボレンシア」を訪ねた。制作している25分番組はこれまでに、毎週1回・計790回放送されている。スタッフの案内で小さなスタジオに入った。そこにはマイクが1本。ここから毎週大きなメッセージが発信されている。ルワンダ虐殺の証人の声を通して、2度と闇の時代にこの国を戻してはいけない!と訴え続けている貴重なラジオ番組だ。

 スタジオの壁には美しい籠(ルワンダバスケット)が並べられていた。その由来をルイーズさんが教えてくれた。「虐殺のあと、被害者家族と加害者家族の女性が、共同で作り始めたのがこのルワンダバスケット。私達はピースバスケットと呼んでいる」と。
(大和田新、フリーアナウンサー)