<南風>未来の医学の到来


社会
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 あなたが人生で大切にしているものは何ですか。仕事、家族、趣味、遊び…。そうしたもののために、目標を持つということは、自分の力を十分に発揮して充実した人生を送るために大事なことです。

 医師で、ノーベル平和賞受賞者、ドイツ人のアルベルト・シュバイツァーは「成功が幸福の鍵なのではない。幸福が成功の鍵だ。今やっていることを好きになれば成功するだろう」という名言を残しています。まず自分が取り組んでいることを好きになり、それに応じて正しく優先順位をつけていくということです。

 みなさんはさまざまな目標を持っていると思いますが、私は、実は最も重要な目標は健康ではないかと思います。健康はすべての基盤であり、それなくしては他の価値ある目標を達成することも難しいでしょう。

 日本に住む私たちは、世界でも最高レベルの医療を受けることができます。私自身も定期健診や予防接種、治療や医療相談を通して健康的な生活を送ることができています。そして今、「システム医学」が世界の医療に革命を起こそうとしています。システム医学では、大規模でさまざまなデータを人工知能が分析します。病歴や誕生から死までの一生分のデータなどを用いてより良い診断や治療の提供が可能になります。つまり科学的根拠に基づいた医学で、患者一人一人に合わせた薬を用いてオーダーメイド医療を提供することが可能になるのです。

 さらに、全遺伝情報であるゲノムデータを使えば、病気の発症を予測して早期治療を行うことができるようになるでしょう。ひとりひとりが目標を達成して幸せな人生を送ることにつながる未来の医学の到来が楽しみですね。もちろん運動やヘルシーな食事も健康には必要です。私もこの原稿を書き終えて、ジョギングに出かける予定です。
(ピーター・グルース、沖縄科学技術大学院大学学長)