<南風>朝佳さん


社会
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 「朝佳さんの生年月日を教えてください」―全国紙の取材を受けている時、記者の方から姓ではなく名前で呼ばれびっくりしたことがあります。仕事の場面で名前で呼ばれることが初めてだったからです。その記者の方によれば、沖縄支局では沖縄の習慣を尊重して、社内でも取材でも名前で呼ぶことにしているのだそうです。確かに沖縄では、姓ではなく名前で呼ぶことが多いような気がします。姓ではなく名前で呼ぶのは、沖縄が「横型社会」である象徴なのでしょう。

 私の職場では、職員はふだん私のことを「普天間さん」と呼んでいます。名前ではなく姓で呼んでいるのですが、館長とは付けません。もちろん公の場では「館長」と呼び、内と外を使い分けているようです。ひめゆり生存者が館長だった時も、職員は「館長」ではなく「○○先生」と呼んでいました(身内に「先生」と付けるのはおかしいと接遇マナーの講師から指摘を受けたこともありましたが…)。「館長」などの役職名を付けず「さん」付けで呼ぶのは、「横型組織」である象徴と言えるのかもしれません。

 組織には横型と縦型、それらの複合型といろいろなパターンがあります。横型がいいのか、縦型がいいのか、それぞれにメリットデメリットがあると思いますが、横型組織のメリットは、スタッフそれぞれが伸び伸びと仕事ができるところにあるのではないでしょうか。仕事が伸び伸びできる職場は、スタッフ一人一人が主体的になり、発想が豊かになり、仕事に積極的に取り組むようになるのではないかと思います。

 ひめゆり資料館は、先ほどの呼び方にも象徴されているように、典型的な横型組織です。横型組織のメリットを大いに生かして、これからもスタッフが伸び伸びと仕事ができる職場でありたいと思います。
(普天間朝佳、ひめゆり平和祈念資料館館長)