<南風>沖縄の未来の産業


社会
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 親切で誇り高い人々が暮らす美しい島、沖縄。この島の主要産業である観光は、さらなる成長が見込まれています。ただ、長期的にはどうでしょうか。今回は未来の雇用機会についてお話ししたいと思います。 沖縄で人材を雇用したり税収をもたらしている産業には、観光・サービス業、農業・漁業、土木・建築、石油、卸売・小売といったものがあります。しかし、いくつかの成長の見通しはあまり芳しくないように思えます。好調な観光を見ても、土地や交通網などのインフラを考えたとき、あといくつ大型ホテルを建設することができるでしょうか? そもそも観光客というものは渡り鳥のようなもので、ちょっと立ち止まって、またどこかに行ってしまいます。沖縄は、さらに安定した雇用基盤を築き、経済成長の可能性を高める必要があると思います。

 では、新たな雇用はどこで生み出すのか、と疑問に思うかもしれません。今、世界を見てみると、雇用が生み出されているのは、トヨタやシーメンス、ゼネラル・エレクトリックといった大企業からではなく、そこではむしろ逆の現象が起きていることがわかります。AIやロボット工学、機械知能の発達により、大企業は競争力維持のため、むしろ労働者数を減らさなければならないでしょう。

 一方、ハイテクのスタートアップ企業は、世界中で新たな雇用を生み出しています。OISTは現在、恩納村、県、日本政府、投資家、建設業者、ベンチャーキャピタル等と協力してハイテク・スタートアップが起業しやすい、持続可能な場所づくりに取り組んでいます。その実現のためには、県民の皆さまからの理解と支援が必要です。私は、これが高水準・高賃金の雇用を生み出す、という点で沖縄の皆様にとって明るい未来を一歩前進させると信じています。
(ピーター・グルース、沖縄科学技術大学院大学学長)