<南風>ひめゆりの次世代継承


社会
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 ひめゆり資料館をつくり、30年にわたって運営してきた「証言員」(元ひめゆり学徒)たちは現在91歳から94歳になりました。資料館では、「証言員」から非体験者である私たち職員への継承が本格的に進められています。

 ひめゆりの次世代継承の取り組みは、2002年ごろから始まりました。まず考え出されたのは、元ひめゆり学徒の証言を映像化し展示室で上映しようということでした。その後、展示も若い世代に伝わるような内容に変える必要がある、という意見が出て、04年に大幅な展示リニューアルを行いました。さらに、「証言員」が担ってきた「戦争体験を伝える活動」を継承する人も必要だということで、05年、非体験者の「説明員」を初採用し、その数を増やしてきました。

 「継承」というと、戦争体験を伝える活動だけに目がいきがちですが、同じように大事なのは「資料館という場(施設・組織)そのものの継承」です。ひめゆり資料館は、これまでたくさんの方々に戦争の悲惨さと命の尊さを伝える場となってきただけでなく、次世代の後継者を育成する場にもなっており、まさに「平和を伝え継承する拠点」となっています。

 組織(資料館)を継承していく上で大事なのは、スタッフが組織の理念を理解し、目指す目的を共有することです。それが共有できていれば、意見の違いや対立があっても乗り越えられると思います。言うまでもなく、創立者の証言員たちは「ひめゆり同窓生であり生存者である」という共通の基盤に立ち、理念と目的を共有しています。職員の業務は総務、財団事務局、学芸とさまざまでバックボーンもそれぞれ違いますが、体験者と一緒に仕事をし、資料館での仕事を共に経験する中で、その理念と目的を受け継ぎ、共有してきていると確信しています。
(普天間朝佳、ひめゆり平和祈念資料館館長)