<南風>与那覇湾


社会
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 宮古島は、海がきれいなことで有名だ。特に伊良部大橋や池間大橋から望む大海原は青のグラデーションが美しく、海の豊かさ、色の豊かさを実感する。

 さて、同じ海でも与那覇湾の表情はだいぶ違う。宮古の南西部、平良久松、下地地区にまたがる、宮古で一番大きな干潟。泥と砂が混じる海だ。私が子どもの頃、サニツ(旧暦3月3日。浜下りの日)の時には、干潟を利用して「ぬーまぴらす(競馬)」や「宮古角力」などが行われていた。現在は、夏に「サニツ浜カーニバル」が行われている。

 与那覇湾は近くの小さな川、崎田川から水が流れ、またあちこちに海に注ぐ湧水もあり汽水域となっている。昔は、天然の海ぶどうやワタリガニなどもたくさんとれ、わが家の食卓を彩った。

 与那覇湾には、シギ・チドリ類などの渡り鳥が多く飛来し、水鳥の採餌や休息場所となっていることから2012年、ラムサール条約(水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)に登録された。

 環境省のレッドリストにも載っているクロツラヘラサギも12月頃になると渡ってくる。黒いヘラのような長い嘴(くちばし)を横に振り振り餌をついばむ様子はなんとも愛らしい。朝鮮半島や中国黄海沿岸などで繁殖し、渡ってくるとのこと。毎年、崎田橋のたもとで見つけると「今年もよく来てくれたね。んみゃーち(ようこそ)宮古島へ」と思う。また、鳥だけでなく、ハゼやミナミコメツキガニ、シオマネキも多く生息している。あがい、これがまた、かわいいがま。見ているだけで楽しくなる。そして、ここから眺める夕陽も、何とも美しい。

 同じ宮古でも海の表情はいろいろだ。与那覇湾は観光ガイドブックにはあまり載らないかもしれないが、ここも宮古の宝の海。機会がありましたらぜひ!
(松谷初美、宮古島市文化協会事務局長)