<南風>シェークスピアの国


社会
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 シェークスピアは、今もイギリスの人々の生活の中に生き続けている。日本にはシェークスピアみたいな作家っているのと聞かれて、川端康成や森鷗外の立ち位置とも違うと思った。極端に言うと、「水戸黄門」や「サザエさん」のように人々の生活に浸透していると感じるのだ。

 今年の演劇シーズン前にロイヤルシェークスピアカンパニー(RSC)の公演のチケットをまとめて購入した。バービカンシアターで最初に見た公演は「尺には尺を」だ。開演前に、制作スタッフが裏話を聞かせてくれる講演会にも参加した。観客の質問タイムには、カナダのシェークスピア舞台俳優だと言う青年が発言した。RSCの公演は、世界中の役者さんが見に来るのだなと改めて感心した。

 シェークスピアの作品は、独特の詩的な表現で多様に解釈されていることで有名で、演出家の解釈によって随分と印象も変わる。時代背景や登場人物の描写、時には男性役を女性に入れ替える演出もある。作品の共通点は、恋、嫉妬、権力、後悔、絶望、憎しみ、プライド、笑いなどの普遍的なテーマを扱っていて、台詞(せりふ)は全く変えずに物語が進む。「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」と言うハムレットの名台詞もそのままだ。ただし、英語から日本語に訳される時にある程度解釈が固定されてしまっていて、必ずしも正確な訳だとは言えない。16世紀の英語の台詞なので分かりづらく、あらすじを読まずに行って困ったこともある。

 RSC以外の劇団も多くあり、グローブシアターで観た「夏の夜の夢」はかなり爆笑したし、マンチェスター国際フェスティバルでの「マクベス」は今でも印象に残っている。そういえば、琉球王国を舞台にした「テンペスト」もシェークスピアに由来しているとか。本当に奥が深いなあ。

(渡名喜美和、英国沖縄県人会会長)