<南風>アクセントを隠して…


社会
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 今週は大好きなフランスに滞在中。朝のパン屋さんで「ボンジュール、マダム」と、ちょうど私の履いているヒールの高さと同じくらい語尾の上がるお洒落な挨拶を交わし、焼きたてのクロワッサンと共に気持ちの良い一日が始まりした。ロシア作品について書いた前回、想像以上の反響があったので今回はフランス作品についてお話させて頂こうと思います。

 皆さんはフランスといえばどのようなイメージをお持ちでしょうか。華の都パリ、エッフェル塔やフランスパンといったあたりでしょうか。想像するだけで美しく、上品な世界が広がってきませんか? それは音楽にも大きく反映されていて、今でも演奏されるフランス作品は誰もまねできない独自の「センス」が散りばめられています。

 1600年代バッハが教会でオルガン奏者兼作曲家として働くように、フランスにもクープランという作曲家がいました。ですがその後ベートーヴェンの活躍でクラシックはドイツを中心に発展し、ショパンやリストの登場後、再びフランスに天才たちが誕生します。新しい響きを求めて独自の作曲法を追求する人、100年以上前の作品を新しい角度から見つめ自分の作品に生かす人、共通の題材や感情より、「自分ならではの美」を作品に託し、さりげなく品のあるアクセントや香りを隠しておく…音を出さなくても楽譜を眺めるだけで、まるで絵画のように並ぶ音符に興味をそそられます。

 ファッションや他の分野と並べてみても共通するのは「こだわり」だと思います。

 クラシックは、このように背景を知るという愉しみ方もあります。次の忘年会までにこの記事丸暗記して、当日ワイン片手に語ってみて下さい。そこでにやりと出来ればもう立派なクラシックファンです。
(下里豪志、ピアニスト)