<南風>P音からF音へ、そしてH音へ

 日本語の音韻変化の過程をたどる際によく指摘されるのが、P音からF音へ、さらにH音への移行です。現在の「ハヒフヘホ=ha hi fu he ho」の発音は、奈良時代あたりまではP音(パピプペポ=pa pi pu pe po)だったようです。

 ところが、平安時代のころから唇のはじきがだんだん弱くなってF音になり、「パピプペポ」は「ファフィフフェフォ=fa fi fu fe fo」になったとか。母は「パパ」から「ファファ」になったというのです。この「ファファ」は八重山古典民謡の〈無蔵念佛節〉で「ファファグ=母御」と歌われており、F音のころの発音を今に伝えています。

 そして江戸時代あたりから、ハヒフヘホのうちハヒヘホの四音は唇が近づかなくなり、フだけはいまだに唇が軽く触れ合うha hi fu he hoという変則的な形になっているとのこと。このように日本語のハヒフヘホは、pa pi pu pe poからfa fi fu fe foへ、さらにha hi fu he hoへと変化してきたというのです。

 沖縄県内では奈良時代のP音「pa pi pu pe po」が沖縄本島の北部(ヤンバル)地方、宮古地方、八重山地方に色濃く残っています。八重山地方では石垣語よりも黒島語にその度合いが一段と強く、柳田国男の説く方言周圏論が貫徹していることを実感します。

 以下、黒島語と石垣語を比較してみましょう。黒・パタキ=畑←→石・ハ(パ)タギ/黒・パンタルン=太る←→石・ハ(パ)ンタルン/黒・パティルマ=波照間島←→石・ハティローマ/黒・パンビン=てんぷら←→石・ハンビン/黒・プクン=福木←→石・フクン。ご覧の通り、黒島語は一貫してP音ですが、石垣語はP音とH音の間で揺れています。

 言語学の発展史を解明するためにも、黒島語の収集・継承・研究は、きわめて重要だと痛感しています。

(當山善堂、八重山伝統歌謡研究家)



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