<南風>あいさつのことばは?


社会
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 「ぐすうよー ちゅーうがなびら わんねー…」。沖縄本島に行き、催しものに参加するとあいさつの最初のことばとして、先の方言をよく耳にする。そして、時々「宮古でのあいさつは?」と聞かれ困ることがある。

 宮古では特に決まった言い方はなく、例えば私の地域で言うと「うがなーり うらまズ あざたー あんがたー がんづぅかり うらまズなー(集まってくださっているお兄さん、お姉さんがた、お元気でいらっしゃいますか)」などだろうか。

 「おはようございます」や「こんにちは」「さようなら」にあてはまる言葉も見つからない。時々、島外の人に聞かれるのだが、考えてしまう。特に朝のあいさつは、難しい。起きたての場合「みすりどぅ うらまずなー(お目覚めですか)」と言えるが、職場では使えない。昼間、誰かに会えば「んざんかい りゃー(どこに行くの)」があいさつ代わり。具体的な行き場所を伝える時もあるが、急いでいる場合などは「うまんかい(そこまで)」で終わる。「さようなら」は「また、いら(またね)」あるいは、ひとしきり時間を過ごした後は「あつかー、またいら(それでは、またね)」と使ったりする。

 そういえば、5歳のチコちゃんの番組で「さようなら」の語源について取り上げていた。「さようなら」には「さようであるならばこの後は…」という意味が込められているとのこと。先の「あつかー」も「さようであるならば」と同じニュアンスだ。

 なぜ、あいさつがないのだろうと考えると、小さな集落ごとに過ごしていた昔、周知の間柄で改まったあいさつは要らなかったのだろうと想像する。

 んにゃ ばが ぱなっすさぁ うすか(これで私の話はおしまい)。あつかー、またいら。
(松谷初美、宮古島市文化協会事務局長)