<南風>英国のEU離脱


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ブレグジットという言葉をご存知ですか。英国(Britain)と離脱(Exit)を掛けた造語で、英国の欧州連合(EU)離脱のことです。このコラムの掲載される12月12日は総選挙があり、ブレグジットの行方が決まります。

 3年前の国民投票の時は、「朝起きたら、世界がひっくり返ってた」というくらい驚きました。当時のロンドンにはヨーロッパの人々が多く暮らし、好景気で順調にしか思えなかったからです。

 EU加盟国(28カ国)の間では、人と物の行き来が自由で巨大な経済圏をつくっています。そのため、英国とEUの関係は複雑です。移民、関税、社会保障制度、法整備などに問題が生じるため離脱の条件や時期も決まらず、大混乱が3年も続いています。

 EUの将来が上手く行かないと信じている人たちは、混乱が生じても離脱を望み、上手くいくと信じる人たちは、EU残留を望んでいます。未来のことは誰にも分かりませんが、政治家たちは、挑発的な言葉と実現不可能な計画ばかりを繰り返す選挙戦を行っています。

 私が一番悲しいのは「議会制民主主義の発祥地」「紳士の国」だった英国が、分断され罵(ののし)り合う国になってしまったことです。家族が集まる場でもブレグジットの話は口論の元になっていて、国民はブレグジット疲れといったところです。

 離脱推進派の政治家が国民投票前に、フェイクニュースを流したと認めたこともあり、再度の国民投票を求める100万人規模のデモが何度も行われましたが、与党保守党は選挙後に離脱を強行する構えです。

 このコラムが掲載される頃は、選挙結果が出ているでしょう。私たち、英国のウチナーンチュも、ブレグジットという歴史の荒波の中で、足を踏ん張って頑張っています。
(渡名喜美和、英国沖縄県人会会長)