<南風>「サンゴに優しい」の苦悩


社会
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 来年は「環境に優しい」と謳(うた)った商品がたくさん発売されると思います。だけど、それがどう優しいのかを説明する商品は少なく、ぼんやりしたイメージで多額のPR費用をかけ、マーケットに浸透していきます。かたや、「サンゴに優しい」製品を作ろうと海洋生物に対する影響を調べ上げた材料で、商品作りの難易度が高く、PR費用もかけられない小さな会社の私たちがいます。

 今、日本であまり知られていないのは「ナノ粒子」の問題で、ナノ粒子を使うと、スペックの高い日焼け止めが、ノンケミカルとうたえて「だから環境に優しい」というイメージを打ち出せることです。

 ただ、ナノ粒子は小さすぎて海洋生物が吐き出すことができず成長に影響があることが報告されていて、海外の「サンゴに優しい」系の日焼け止めでは、必ず「ノンナノ」と表記され区別化されています。ナノ成分のデータシートには、「海洋生物に毒性あり」と記載もされているらしいのですが、「環境に優しい」とイメージでPRしていくようです。

 私はウチナーンチュとして、「サンゴに優しい」という商品を一つの疑いもなく販売したいと思っています。しかしマーケットでは「なんとなくで良いから良いものがほしい」と思っていて、来年は「なんとなく環境に優しそう」という商品が棚に並ぶことが予想できます。

 これまでも、賛同してくれた団体などが大手メーカー商品のPRに携わるので協力できなくなったということもありましたし、寂しい気持ちでいっぱいになりますが、そもそも個人の自由なので後ろ姿を見送るだけです。伝わる人にしっかり伝われば良いなと思い、気を強く持っていこうと身を引き締めています。

 いつも明るい話の多い私の苦悩話でした。
(呉屋由希乃、社会起業家)