<南風>OISTと沖縄経済


社会
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 連載最後に、OISTが沖縄県の経済にどのように貢献していくのかというビジョンについてお伝えします。

 これまでOISTは、多様な職種における高技術・高収入かつ安定した職場を提供しており、2040年までには、県出身者千人を直接雇用する計画です。職員とその家族が必要とする衣食住などを通じ、経済発展も持続するでしょう。研究知財も生まれます。OISTは、世界の大学から技術移転の成功手法を取り入れ、さらには日本のイノベーションの拠点となるべく邁(まい)進しています。取り組みの一つとして、OISTの施設や研究ノウハウを活用できる世界中の起業家候補がOISTに集まってきています。今後OIST発スタートアップ企業の数は、年間数社に達する見込みです。

 さらに、多方面の関係機関と検討している「OISTイノベーションパーク」は、基礎研究から生まれた画期的なイノベーションやハイテク企業の拠点として発展することを目指しています。環境に配慮した持続可能な住宅やエネルギー効率に優れた交通を備え、仕事、学校、生活、娯楽(科学をテーマにしたアトラクションなどいかがでしょうか)といった多彩な顔を持つ場所となります。

 ここでは、大学主導のベンチャーキャピタルファンドの可能性を模索し、投資収益による自立を目指します。新興・テクノロジー企業が活気と情報をもたらす環境に、多国籍の技術系企業が引き寄せられ、新たな企業生態系が期待されます。

 OISTは世界トップクラスの研究教育拠点としてのみならず、観光地として名高い恩納村の経済を多様化する一翼を担い、皆さまがOISTを沖縄の誇りと思ってくださるよう、引き続き沖縄の未来に貢献するために取り組んでいきます。
(ピーター・グルース、沖縄科学技術大学院大学学長)