<南風>赤らむ頬がなんだかキュート


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 真冬を迎えたイタリア。朝、アパートメントから通りに出ると、街行く人は皆コートのポケットに手を入れ、肩を上げて、早足で歩いています。寒さで赤く染まる頬はなんだかキュート。明るくなるのが遅い冬は、早朝までクリスマスのイルミネーションが点(つ)いており、ベッドから出るのは億劫(おっくう)でも外に出てしまえばルンルン。

 一年の終わりとともにこの連載もついに最終回。今年は、自分で選んだ挑戦だけでなく、実力以上の経験を多くさせてもらいました。

 一年で何度もオーケストラと共演させて頂けたこと、海外の主要都市での演奏、舞台以外でも、ポリシーを持ち音楽と向き合い、人生に誇りを持つ人達と出会えたことは、自分のこれまでや、今をくっきりと見えるようにしてくれました。直感に頼って生きてきた私にとって知的に日々を過ごす喜びを見つけ始めたのは大きな進歩で、このコラムで出来事を言葉にできたのも貴重な体験でした。

 今日の記事を書くために過去の投稿を読み返し、苦しい時はあれど、美しい「時」にちゃんと思いを寄せられる人間になれてるんだなと思い、嬉(うれ)しくなりました。残念ながら夏に掲げた目標の痩身だけは…お許し下さいませ!

 世のためになるような投稿は出来ませんでしたが、沖縄の皆様にヨーロッパの空気を感じて頂けていたら幸いです。言葉が表現の幅を狭めてしまう時もあるけれど、言葉が想像力の扉を開き、部屋の中で外の世界を感じられるのは人類にだけ与えられた尊い能力ではないでしょうか。それを再認識出来たことで演奏も少し幅が広がったように思います。いつかどこかで皆様とお会い出来る日を楽しみにしております。ありがとうございました!

 皆様にとってこれから迎える2020年が素敵な日々となりますように。
(下里豪志、ピアニスト)