<南風>サザンの「TSUNAMI」


社会
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 2019年3月9日(土)午後0時15分、私がラジオ福島で19年間担当している番組「大和田新のラヂオ長屋」で、サザンオールスターズ最大のヒット曲「TSUNAMI」を放送した。震災後3回目のオン・エアだった。2万人以上の死者・行方不明者を出した「東日本・津波・原発事故大震災」から明後日で8年。震災の記憶が薄れて行く中で、このTSUNAMIという曲が、風化防止のきっかけになって欲しいと願っての放送だった。

 原発事故の報道が中心の福島だが、津波で1605人も亡くなっている事実を知ってもらうためにも。

 しかし、過去2回の放送と同じく悩んだ。そこで、取材を通して知り合ったご遺族に、3・11直前にTSUNAMIを放送することをどう思うか聞いた。

 大学生の長男を津波で亡くした新地町の寺島浩さんからすぐにメールが届いた。「私もサザンは大好きです。何といっても亡くなった息子の名前(佳祐)は、桑田佳祐さんからですから。息子の命を奪ったのは津波ですが、避難させなかった自動車学校の対応が悪かったのです。曲をかけていただいてもかまいません。いつか桑田さんがライブで、TSUNAMIを歌ってくれる日を待っています」

 津波で父・妻・次女を失くした双葉郡大熊町の木村紀夫さんは「TSUNAMIに対して否定的な気持ちはありません。嫁さんとサザンのコンサートに行ったし、結婚してすぐのリリースだったと思うので、この曲は私達の大切な思い出の一曲です。天国の嫁と一緒に聴きます」。

 そして、「東日本・津波・原発事故大震災」発生から8年9カ月が過ぎた今月28日(土)午前11時すぎ、震災後4回目となるTSUNAMIを放送した。2万人が亡くなった東北の大震災を忘れないでほしいとの願いを込めて。

(大和田新、フリーアナウンサー)