<南風>「沖縄らしさ」発信


社会
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 博物館にはさまざまな人が訪れる。家族連れや県内の小中高校生、県外からの観光客に加え、最近は海外からの観光客も増加しグローバルな様子だ。

 年間約50万人が来館し、琉球・沖縄の自然や歴史、文化について理解を深めていただいている。そんな博物館で思うことは「ローカルこそがグローバル」ということだ。「沖縄らしさ」こそが世界に発信する魅力だと思うのだ。

 沖縄は世界でもまれな湿潤亜熱帯の気候に恵まれ、海洋性と島嶼(とうしょ)性を持ち合わせた自然環境のなか、独自の歴史文化を育んできた。歴史、考古、自然史、美術工芸、民俗をテーマに当館では展示を行っている。博物館では「やっぱり沖縄は独特だな」と実感する。

 自然環境をはじめとして沖縄の歴史は、おそらく日本中のどこの地域よりもダイナミックで波乱に満ちたものだといえるだろう。

 例えば約2万年前の港川人がどこから渡ってきたのかというロマン。貝塚時代の貝の交易や繊細な彫刻を施した蝶型骨器の魅力。グスク時代の人物像や琉球王国時代の繁栄。したたかに生き抜いた日清両属時代。明治維新後に拡大していく日本に飲み込まれる沖縄県。鉄の暴風が吹き荒れた沖縄戦。アメリカ統治下に日本復帰など枚挙にいとまがない。歴史事象とその前後に絡み合う要因から時に誇り高く、時に悲しく、時に怒りに震えるものである。

 そんな歴史・自然環境の中で育まれた伝統や文化は魅力あふれるものだ。沖縄らしくあればあるほど、独自性を増し輝く。芸能や染織などはその一例だといえる。まさに「ローカルこそがグローバル」なのだ。

 ただ独自といっても、それは長い歴史の中で交流を通して成立してきたものである。沖縄は異文化を吸収しつつ独自の美意識や感性で世界に誇れる「沖縄らしさ」を成立させてきたのだ。

(外間一先、県立博物館・美術館主任学芸員)