<南風>視覚障がい者で顕微鏡使い?


社会
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 18歳のときに沖縄を離れ、今は山口県にある宇部高専で教員をしている。高専は高等教育機関なので、やっている仕事は大学教員とそう変わらず、教育と研究が主だ。つまり、私は教育者でもあり、研究者でもある。専門は生命科学。生命の謎、「生き物(もっと正確には細胞)がどう動いているのか?」をテーマに研究を続けている。

 私の研究にとって要となるのが顕微鏡だ。顕微鏡が捉える映像を武器に研究を展開している。顕微鏡といっても実に多種多様だ。一般人が頭に思い浮かべるものから、およそ顕微鏡とは思えない大型のものまであり、必要に応じて使い分ける。私の研究者としての強みは、ほとんどの種類の顕微鏡を使いこなせることだ。

 そんな顕微鏡使いの私は、実は重度視覚障がい者だ。国指定の難病「網膜色素変性症」という病のために目が悪くなり続けている。将来、失明の可能性ありとも言われている。目はだいぶ悪くなった。右目はもう視力がなく、左目は眼鏡をかけて0・7といったところだ。視力0・7なら、結構見えているのではと思うかもしれないが、私の場合は見える範囲(視野)がとても狭い。普通なら上下に130度、左右は150度ほど視野があるところ、私は2度程度しかなく、数字にすると視野欠損率は99%以上になる。これは針穴程度の小さな隙間から外界を見ているようなものだ。例えば、人と向かい合って話をするとき、私には相手の左目しか見えていない。これでは、相手の表情の変化を読み取ることは無理だ。

 この狭い視野のため、私は常に白杖をついている。足元に障害物がないか、白杖でコツコツと地面を探りながら、慎重に一歩一歩足を前に進めている。

 さて、読者の疑問は予想できる。「そんな重度視覚障がい者が何故(なぜ)に顕微鏡を?」だろう。
(島袋勝弥、宇部工業高等専門学准教授)