<南風>私はビジュアル系研究者


社会
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 まず、言いたい。重度視覚障がい者でも顕微鏡を操ることができる。実際、私は顕微鏡で捉えた画像や動画を武器に研究を展開している。学会の場で、白杖を持った私が、次々と顕微鏡映像を繰り出す様は異様にも思えるだろう。なにせ、視覚障がい者がグイグイと視覚的に訴える発表をしてくるのだが。そんな「見せる」ことで研究の世界を生き抜く私は、自称「ヴィジュアル系研究者」だ。

 では、視覚障がい者は皆、顕微鏡使いになれるのだろうか?

 残念ながら、違う。目が悪いからには、必ずハンデを背負う。そのため、さまざまな工夫や周りからの助けなしでは研究は続けられない。それに加え、「運」がとても重要になるが、こればかりは、自分や周囲の努力ではどうにかなるものではない。私が、なぜ顕微鏡にこだわり、そして、どのように使いこなしているのか、その話をするためにも、まずは少し自分語りをさせてほしい。

 子供の頃、星が大好きだった。神話に登場する神々や生き物に胸踊らせ、よく星空を眺めていた。ときには寝ている親に黙って、早朝にこっそりと家を抜け出し、星座探しに出かけた。夜明け前の夏の夜空には、冬の星座たちが広がっている。私のお気に入りのオリオン座も、そこにあった。でも、いつも母親に気づかれ、家に連れ戻され、説教を受けた。

 この頃、私の夢は天文学者になることだった。天文学者なら、毎日星空を眺めることができると勝手に思い込んでいた。星好きが高じて、お年玉で天体望遠鏡も買った。だが、安物だったので、月すらまともに見えず、ガッカリした覚えがある。望遠鏡カタログをむさぼりながら、いずれはこの一番高いやつを買ってやると心に決めたものだ。そう、天体少年であった私の目は至って正常だった。
(島袋勝弥、宇部工業高等専門学校准教授)