<南風>父親の育休と優しい社会


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 小泉環境相が育児休暇を取得すると宣言した。現役閣僚の育児休暇取得は初めてということもあり、海外も含めて賛否両論メディアを賑わせている。

 日本は父親の育休取得可能な期間が法制度によって30週間認められている。これは、ユニセフが先進31カ国に調査を行った「家族にやさしい政策(Family-Friendly Policy)」レポートによると、世界最高水準だ。しかし実際の育休取得率は、2018年の調査で6・16%と先進国の中で最低である。この背景には、「実際の制度があっても育休を取りにくい雰囲気」や、育休を取得した場合にキャリアのコースから外されてしまうということがあるのだろう。

 少し話は変わるが、私が産後に驚いたことの一つに、東京の都心のドラッグストアにオムツやミルクが売ってなかったということがある。銀座や渋谷などのオフィス・繁華街に、乳児連れがいることが想定されていないのだ。その事実に、大学入学以来20年も東京に住んでいたのに気づかなかったのである。自分がいかに立場の違う人の意識を持てていなかったのかということに衝撃を受け、自分が気づいていない課題はたくさんあることを認識したのだった。

 父親が育休を取る重要性は、ここにあると思っている。

 男性と女性は、生物学的には異なるので、全く同じ視点から共感を得ることはできない。それでも、人生の大きな変化の中で時間を共にし、これまでと異なる視点から妻や子どもと社会を見ることは、男性が父親として視点を広げるきっかけになるのだろうと思う。それは、自分と異なる人に共感し、広く社会に目を向け、目に見えない課題に対しても手を差し伸べようとする優しい社会となっていくために必要なことでもあると思う。

(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事、re:terra社長)