<南風>サファリの楽しみ


社会
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 「ケニア」と聞いて「大自然」を連想する方が多いと思います。サバンナと呼ばれる広大な草原に象やキリン、シマウマが歩き、ライオンが獲物を狙う。ケニアが舞台の映画「野生のエルザ」や「愛と哀しみの果て」でも雄大な自然に魅せられました。

 野生動物に出会う「サファリ」は、スワヒリ語で「旅」という意味です。ケニアのGDP産業別シェア(18年)で8・8%を占める観光(第一位は農業で約34%)は経済成長の柱であり、サファリはその要です。駐日ケニア大使館ホームページによれば、登山やスキューバダイビングのスポットも含めると59の国立公園・国立保護区がありますが、ワイルドライフサファリで最も有名なのはマサイマラ国立保護区でしょう。雨季明け6月頃から、ヌー(ウシカモシカ)の大群がマラ川を越えて来る瞬間は圧巻です。

 四輪駆動車で公園内を巡るゲームドライブは大抵、動物が姿を現す早朝と夕方の一日2回あるので、公園内や近くのロッジに宿泊します。草原の中にいるので、水は大切に使います。また、自家発電のため、電気が使えるのは夜の4時間程度。熱いシャワーとシェフの心づくしの夕食の後はたき火を囲み、世界中から来た旅行者と、その日出会った動物自慢で盛り上がったり、マサイ族の踊りに加わったり、満天の星空を眺めるのが楽しみになるのです。

 草食動物と肉食動物が自然のルールの中で生き抜いている光景に、私はいつも感動します。同時に、同じように一つの存在にすぎない人間の行動が取り返しのつかない事態を招かないか心配になります。貴重な生態系を維持し、ここで生活を営んできた人々の伝統や文化にも配慮しつつ、国の経済を支える観光資源として最大限活用する。難しい挑戦にケニアがどのように応えていくのか、これからも見守っていきます。
(佐野景子、JICA沖縄センター長)