<南風>Rest In Peace Kobe Bryant


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 私が初めてコービー・ブライアントのプレーを見たのは中学生の頃で、その動きの美しさに一瞬にして心を奪われた。ルーキーながら出場したオールスターのスラムダンクコンテストで魅せたレッグスルーダンク(空中でボールを股の下を通してからのダンク)も衝撃的だったが、何よりも強く印象に残ったのは「エアボールパーティー」だ。

 同点で迎えた残り10秒、負けたら敗退が決まる大一番で、高校を卒業したばかりのコービーがラストシュートを任されるのである。チームの命運を託されたシュートは、エアボール(リングにかすりもしないミス)。チームは敗退したが、シュートを外したことに悪びれる様子もなく、堂々とした立ち振る舞いは常軌を逸していた。憎いほど生意気で、格好いいのだ。そんなコービーについてバスケットボールファンは「好き」か「嫌い」かの2択に分かれた。

 コービーの思い出ばなしは一生尽きることはないだろう。1996年のNBAデビューから引退までの20年間の栄光と挫折、コービーにまつわるたくさんの思い出とともに、淡い青春時代の記憶がとめどなく甦(よみがえ)る。

 昨年中国で行われたワールドカップでは、大会アンバサダーを務め、組み合わせ抽選では、日本とアメリカを同組に引き合わせた。2023年に沖縄で開催されるワールドカップにも生きていれば間違いなくやってきていただろう。08年北京、12年ロンドンとコービーは2度の金メダルを獲得している。アメリカ代表のOBとして東京オリンピックを楽しみにしていたに違いない。

 人種、国籍、性別も関係なく世界中は悲しみに包まれている。コービーと同じ時代に生きられて、私たちはどんなに幸せだったことか。

 ありがとうコービー、これからもたくさんあなたの話をさせていただきたい。
(金谷康平、沖縄バスケットボール情報誌アウトナンバー編集長)