<南風>網膜色素変性症?


社会
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 流れ星は、全く見えなかった。平静を装って仲間と帰路についたが、この一件は心の中でくすぶり続けた。何かがおかしい。だが、日常生活でとくに不便はなかった。自転車で通学していたが、夜も問題なく行動できた。結局、私は病院に行くこともなく、そのまま学生生活を続けた。

 話は前後するが、天文少年だった私も大学進学を控え、将来の進路について現実的になっていた。さて、専攻は何にしよう? 当時、まだ世間では「バイオ」がもてはやされていた。そんな時代の雰囲気に流され、私は大学で生物系を学ぶことにした。

 東京の大学に進学した時点で、私は研究者になると決めていた。必死で勉学に打ち込んだわけではないが、講義には真面目に出席し、よく図書館にもこもっていた。教科書はあえて英語版を購入した。研究者としてのセンスは未知だったが、傍(はた)からは熱心な学生に見えただろう。

 研究者になるべく、当然のように私は大学院に進み、研究生活を始めた。そんなある日のことだった。私は目について書かれた入門書を読んでいた。目に入った光がどのようにして脳に伝わり、そして映像となるのか、その仕組みを分かりやすく解説した本だった。目は「脳みそが外に出た部分」と言われるだけに、複雑で美しい。

 本を読み進める私の手が、ふと、あるページで止まった。そこには目の網膜に異常が起こる難病、「網膜色素変性症」について簡単な説明があった。私は思わず、二度、三度とその部分を読み返した。

 本にはこう書いてあった。「この病気になると、まず鳥目の症状が現れる。そして、段々と視野が狭くなる。視野の欠け方は人によって異なるが、最初に周辺部の視野が消え、徐々に中心に向かって欠けていくことが多い」
(島袋勝弥、宇部工業高等専門学校准教授)