<南風>本当に大切なこと


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 国内での新型コロナウイルスの感染が広がっている。私の周りでは、既に飲み会からある程度の規模のイベント含め、中止やリモートでの開催に切り替えているところが多い。東京も(実は今週は海外に来ているのだが)、成田空港も、やはりいつもよりも出歩く人が少ないようだった。

 こうした新型コロナウィルスの拡大の中で、本当にこのタイミングで集まるべきなのかどうかということから、本質的に必要なことが何なのか見つめ直されているような気もする。

 例えば、感染者の日本人の多くは多少具合が悪くても勤務していたことが明らかになっているが、こうした行動に日本人が働くことをどう捉えているのかということも、客観的に気付かされたりする。

 私たちは、本当に大切なこと、あるいは大切にしたいと思っていることに時間を使えているだろうか。

 2018年に発表されたOECD加盟国の労働生産性の比較によると、日本はG7で最下位となる1時間46・8ドル、16年厚労省データでは年間の労働時間は1724時間とされる。家族と過ごす時間で見ると、日本は他OCED諸国より低く30位とされる。一方で、電通が11年の東日本大震災の後に関東を中心に行った調査では、震災後に父親が家族と過ごす時間が1週間あたり5時間13分増えたとされている。

 東日本大震災で多くの人が何かしらの精神的な影響を受け、生活が変わったと聞く。あれからもうすぐ丸9年経つが、私たちはあのとき気付かされた感覚を覚えているだろうか。大切なことを先延ばしにしたり、後回したりしていないだろうか。

 今中止や延期になっていることを見つめていると、本当に自分に大切なことはきっとあまり多くないのではないかとも思ったりする。
(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事 re:terra社長)