<南風>石碑めぐりにハマる


社会
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 「タイムトラベル」といえば大袈裟(げさ)だろうか。でも歴史を物語る資料に出合うと心は一気に時間を飛び越え、その感動は本物だと確信している。私が「タイムトラベル」する地点はさまざまな場所に点在している。

 実は県内各地の石碑めぐりにはまっている。最初は多良間島の旧飛行場跡地でのことだった。多良間島の旧飛行場建設は復帰前の1971年だった。アメリカ統治下の時代にできた滑走路は当時の高等弁務官の名が付き、その名は「ランパート滑走路」。今は原野となった旧飛行場跡地の片隅に記念碑が建立されていると地元の方々から教えてもらい確認に行った。

 しかし、これが見つからないのである。旧ターミナルビルや旧駐車場はすぐに見つけた。滑走路だったと思われる地点も特定できた。だけど記念碑は見つからない。小さすぎて見えないのかと思い、再度、役場や図書館の職員に記念碑のことを聞いてみると両手を広げて「このぐらいはあるよ」とのこと。記念碑は、大きなものであるらしい…。

 調査員を増やしてギンネムをかき分け雑木林の中へ。すると目の前に巨大な記念碑が突如現れた。なんと高さも幅も2メートル以上の立派な記念碑である。碑文には離島であるがゆえに空港建設を願った人々の思いや、完成した時の喜びが日付や建設費用とともに記録されていた。コンクリート製の記念碑は、滑走路建設と同時に建立されたもので、当時の人々の気持ちを伝える貴重な資料である。

 このような記念碑などは、後に編集された報告書よりも実在する場所でリアルな歴史を実感させる。私にとっては「タイムトラベル」的なことなのである。

 さて、那覇市の奥武山公園にも石碑が点在している。なかでも力強く「土」という一文字が刻まれた石碑がある。ここには感動の歴史が埋まっているのだ。
(外間一先、県立博物館・美術館主任学芸員)