<南風>居場所


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 心療内科医という心地よい場所にたどり着きました。近年、心療内科は大変誤解されているため誤解を解くことから始めましょう。

 心療内科は、精神科とは違います。不安障害、うつ病、飲酒・薬物依存症、統合失調症などの「心の病気」を診る科が精神科です。

 一方、心療内科は「体の病気」を「体と心」の両面から治療する診療科です。現代社会には、地震・津波、感染症などの様々なストレッサーだけでなく、学校・職場・家庭における人間関係の軋轢(あつれき)、例えば、上司と部下、嫁姑、夫婦、親子関係などの心理社会的ストレッサーが多く、そのようなストレッサーに晒(さら)され、生きていかざるを得ません。

 このような心理社会的ストレッサーに対して適切で効果的な対処ができない場合には、それがストレスとなり「心身症」としての「体の病気」を発症するのです。喘(ぜん)息、過敏性腸症候群、頭痛などが代表的な例です。

 ところで、心身症の患者さまは、「ストレスに弱いダメな人間」でしょうか。違います。彼らは、依存・愛情・承認などの本来の欲求や喜怒哀楽のような自然な感情を「抑圧」して、あるいはそれを言葉で適切に表現できずに、姑や夫に認められたい、親の期待に応えたいなど過剰な努力を払い続けて、無理しすぎている方々が少なくありません。

 従って、心療内科療法は、内科的な治療と並行してストレスに適切に対処できるような心理療法を行います。患者さまの多くは、ストレスと自分の病気に向き合い、病気の成り立ちに気付き、病気を克服して成長しようとする方々です。

 よくなられた患者さまは、「症状が取れてよかった、病気が治ってよかった、病気をしてよかった!」と語ってくれます。本来の笑っていられる自分を取り戻したのです。病気は、自分を成長させるチャンスになり得るのです。
(原信一郎、心療内科医)