<南風>国の借金の行方

 現在、政府債務は、太平洋戦争末期と同じ、GDP比で250%にも達するなか、社会保障費は増え続けている。財政再建を急ぐべきであるのに、安易とも言える議論が語られている現状に不安を覚える。

 その一つは、FTPL(物価水準の財政理論)である。もし、その国の国債の債権者のほとんどが、その国の国民である場合、財政赤字を一種の規律をもって無視し続けたなら、物価は緩やかに上昇し、財政赤字は実質目減りする。これは国債償還による財政再建よりはるかに効率的であるとする(プリンストン大学 シムズ教授)。これでは財政再建の放棄であるが、我が意を得たりと賛意を表す日本の学者もおり、国を憂えないのかと心配である。

 他の一つは、MMT理論(現代貨幣理論)である。自国通貨を持つ政府は、財政的な予算制約に直面することはないという考えである。国債をいくらでも発行できるし、それによって破綻することはない。巨額の財政赤字があっても、インフレも金利上昇も起こっていない日本はMMTの成功例であるとする意見もある(MMTの主唱者 ステファニー・ケルトン教授)。

 世界の景気は10年ぶりに下降するといわれている中、財政再建の失敗は、知らないうちに断崖絶壁を背にして座っているようなものであり、亡国への道ではないか。

 確かに、戦後の日本のインフレは物の不足ということから起こっており、今の日本は物不足ではない。同じ論理で語ることはできない。しかし、貨幣量の拡大や国の巨額債務は、やはりインフレの原因にはなる筈(はず)である。戦後、日本の貨幣価値は、インフレにより100分の1に激減し、国民は泣いた。一方、政府は戦争に負けたのに、貨幣価値の暴落により、実質的に借金は返さなくてもよかった。これは要領がよすぎる。
(山内眞樹、公認会計士)



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