<南風>これ、顕微鏡ですか?

 さて、研究のことに話を移そう。

 目標高く研究室に入ったものの、研究という意味では、私は全くイケてなかった。論文はよく読むが、優柔不断なところがあった。頭でっかちで手が動いていなかった。少し実験してはすぐに躓(つまず)くを繰り返しで、研究は全く進んでいなかった。

 そんなとき、共同研究先の新しい顕微鏡を導入するという話になった。誰が適任か?

 同期は皆、それぞれの研究で忙しかったので、暇人の私に役が回ってきた。以前から、その新しい顕微鏡に興味があり、とくに断る理由もなかった。このときはまだ、目の病気に気づいていなかった。

 いざ、共同研究先で目にした顕微鏡に私は面食らった。専門がバイオの私は、てっきり何かでき上がった装置のようなものを想像していた。だが、目の前には特注の台の上にレンズや見たこともない部品が並んでいた。「これ、顕微鏡ですか?」という私の戸惑いは置いてけぼりにされ、相手方はその「顕微鏡」の説明を始めた。

 物理は嫌いではないが、そう詳しくもない。不安もあったが、とにかく「顕微鏡」を見よう見まねで組み立て始めた。今思うと、大したことのないものだったが、私の研究室には顕微鏡の専門家はおらず、相手側の助言だけが頼りだった。程なくして「顕微鏡」は無事にできあがった。これが、私と顕微鏡との今でも続く長い付き合いの始まりだった。

 当然の流れで、その「顕微鏡」を使って研究することになったが、目の病気が発覚したのは、実はその数カ月後のことだった。誰も専門家がいないなかで、視覚にハンデのある私が特殊な顕微鏡を使う。この研究をやり遂げられる自信はなかった。この状況から、逃れたい一心だった。
(島袋勝弥、宇部工業高等専門学校准教授)



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス