<南風>ご先祖様とレジリエンス力


社会
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 今日は、春分の日。お彼岸の中日である。故郷の長野に居た頃は、お盆以外でもお彼岸には家族で連れ合って、小高い丘の畑の中腹あたりにあるお墓に手を合わせに行ったものである。それも大学で上京してからすっかり忘れてしまっていて、今では春分の日は祝日ということだけになってしまっていた。

 祖父母の影響が大きいと思うが、私にはご先祖様が最も身近な神様であるという感覚がある。祖父母の家には、曽祖父母や曽々祖父母の写真が飾られていて、小さい頃から見守られているという感じがあった。また、親が共働きだったこともあり、既に他界した祖父母と過ごした時間が多いこともあるからだと思うが、今でも何かあると亡くなった祖父母をはじめとしたご先祖様に対して、心の中で語りかけたり、報告したりしている。こうした「祖霊信仰」も本州以上に沖縄には風習として残っていると聞く。

 科学や技術の進歩は、日々ものすごい勢いで進み、世界は確実に物理的にも近くなっている。世界に存在する全データのうち、90%が直近2年間で生まれたデータと言われる。今回の新型コロナウイルスも、この時代だからこそ数カ月というスピードで、世界の全大陸に急速な拡大をしたと言えよう。

 技術革新に助けられている一方で、ご先祖様が築き上げてきた文化や命を大切に見つめることも忘れないで過ごしたいと想うし、それこそが人としても社会としても「レジリエンス」という自発的治癒力の根源でもあるように想う。個人としての自分や、組織や社会を創り上げている根源を見直すことは、新たな強さを産むはずだ。

 コロナショックは、まだ長続きしそうだ。だからこそ、そこに存在しているはずの根源的な強さを見つめたい。
(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事 re:terra社長)