<南風>旅立ち


社会
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 小さな離島の宿命「十五の春」高校進学のため、子供たちは島から離れていきます。どれだけ世の中が便利になっても、ずっと変わらない3月の風景です。

 3月7日、渡嘉敷小中学校では規模を縮小して卒業式が行われました。個人的には、小学校の「美ら島とかしき太鼓」、中学校の「風神太鼓」の指導を通して、時間を共にしてきた子供たちです。小中校の教員は3年から5年で島を去っていきますが、私は「地域の伝統芸能を学ぶ」趣旨から、総合学習の授業で25年以上の長い年月を子供たちと過ごしています。今では、社会人として島に戻った教え子が慶良間太鼓に入会し、一緒に舞台に立ち、さらにその子供が小学生や中学生になり、親子二代に太鼓を教えるのは、指導者冥利(みょうり)に尽きます。

 私も経験していますが、島を離れて新しい環境でのスタートは、学校生活のみならず普段の生活も一変するので、特に最初の1学期間は苦労すると思います。島の子たちは家庭、学校、地域と恵まれた環境がほとんどなので、高校での競争や、日常生活の厳しさなどを実感していくこととなり、ホームシックになる子もいます。一日も早く信頼できる友人をつくって新しい環境を楽しんでほしいと思います。

 卒業式で3年生に捧げたメッセージです。

 卒業おめでとう。皆さんとは小学校、中学校と多くの時間を共有することができました。中学校総合文化祭では他校生徒をはじめ会場の観客を圧倒しましたね。風神太鼓で与えた感動と、自分自身が得た感動を忘れないでください。これから歩む道は、楽なことだけではないと思うけど、風神太鼓の誇りと自信を胸に歩んでほしいです。次は指導者ではなく、同じ演奏者として舞台に立てることを心から願います。
(新垣徹、渡嘉敷村商工会会長)