<南風>感染症と国際協力


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 新型コロナウイルスの感染拡大は、あっという間にヨーロッパが世界的大流行の中心となりました。日本は持ちこたえているように感じられますが、海外では、日本からの入国を制限する国が少なくありません。感染症に国境は関係ない、という事実に改めて気づかされました。日常生活や経済活動とどう折り合いをつけながら対応するのか、社会全体で手探りが続きます。

 感染症といえば、結核はかつて日本の国民病と呼ばれ、戦後しばらくは死亡原因の第1位でした。その後、生活環境の改善や薬による治療が進み、死亡率は激減しました。その経験や実績を、結核、コレラ、ポリオ、マラリアなどの感染症で苦しむ開発途上国で活かす取り組みが60年代にJICAの前身である海外技術協力事業団(OTCA)により開始されました。

 しかし、80年代以降、HIV/エイズ、エボラウイルス病、鳥インフルエンザなど新しい感染症が発生したほか、薬剤耐性の結核やマラリアが発生します。日本は感染症問題を2000年のG8九州・沖縄サミットの主要テーマの一つに取り上げ、その結果、「沖縄感染症対策イニシアティブ」が発表されました。これを契機として感染症対策への世界的関心が高まり、国際社会の連携・協調によるアプローチが進むようになりました。02年には三大感染症の対策に必要な資金を集め、必要とする地域へ拠出するための新組織「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」が設立されましたが、日本が生みの親と言われています。

 感染症対策でリーダーシップを発揮してきた日本。新型コロナ対応はまだ続きます。先達が困難から学び、状況を改善し、その知見を世界と共有してきたように、私たちも、有効な対策、誰も取り残されない取り組みを協力して推進することが大切だと思います。
(佐野景子、JICA沖縄センター長)