<南風>患者さまが先生(Ⅱ)


社会
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 30代女性、気管支喘息(ぜんそく)の患者さまから心身症としての「体の病気」の発症と経過には、感情や欲求を「抑圧」するストレスが強く関与していることを教わりました。

 人は、自分の心理的・精神的な安定を求めようと心の防衛をします。とくに嫌な感情や考え、記憶などを無意識の中に押し込んで意識しないようにすることを「抑圧」と言います。

 彼女の治療は、「抑圧」から自らを解放して本来の自分に戻ることです。そこで自律訓練法でリラックスさせ、そのうえで自律性中和法という「抑圧された欲求や感情をすべて言語化」していく治療を受けてもらいました。大変辛い治療ですが、頑張り屋さんの彼女に適切でした。「本心」を言語化した内容を示します。

 ・親に認めてもらいたくて、辛いのに我慢して頑張ってきたけど、褒められることはなかったし

 ・何でも自分できめなきゃいけないって、4歳の時から、言いたくても言わない、泣きたくても泣かない

 ・目を閉じているとよくみえる、自分が自分じゃない、誰かの、親のお人形、自分で生きてきたつもりでいたけど、結局親のために生きてきただけ

 ・良く思われようとして、はぁー馬鹿だね、誰のせいでもない、やっぱり身から出た錆(さび)、よく考えると最終的にでる結論、自分だ、だから余計悲しいよ、何だ犯人は自分だったんじゃない

 ・世間の目を気にして生きてたけどもうやめよう、どう思われたっていい、私は私なんだから、もっと自由に生きよう

 ・この病気になってよかった、自分みつけられた、自分取り戻せた、嬉(うれ)しいよ、自分の意見通せなくなって、通さなくなっちゃって、通そうと思わなくなっちゃって、こんなになっちゃったけど、もう嫌(いや)だ、すばらしいこと経験したよ、アリガトウ、サヨナラ、心身症

 患者さまが先生です。
(原 信一郎 心療内科医)