<南風>私は20歳にならないの。


社会
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 忘れられない女性のことを感謝の気持ちを込めて投稿したいと思う。精神科病院の相談員として働いていた頃、毎回5~10分私と面談をしていた人がいる。「気持ちを聞いてほしい」と医師から言われたからだ。

 その子は19歳。私だけが話す一方的なもの。彼女の表情は硬く、視線も合わせてくれない。返事もしてくれず「この子は私が嫌いなのだな。苦しいやりとりだな」そう思っていた。

 彼女の誕生日が近づいてきたので「もうすぐ誕生日ですね」と声をかけた。「私はオトナにならない。20歳にもならないから」と返事が。意味がわからなかった。そして、誕生日の朝、自死したことを知る。「私は20歳にならないから」という言葉を思い出し、抑えられない後悔と悲しみが私を襲ってきた。この日は自分がどのように帰宅したのかもあまり思い出せない。何もしてあげられなかったこと。何のために私は面談していたのかな、役に立てなかったという自責の念。

 後日、お母様から私宛てに電話があった。「娘の宝物箱にあなたの名刺が入っていたので、お電話しました」と。宝物箱の中に私の名刺を入れてくれていた。涙がとまらなかった。私にとって「苦しいな…」と思って臨んでいた面談が、彼女にとっては大切な5分だった。

 視線が合わせられなかったのは、緊張していたのかもしれない。そんなことも察してあげられなかった自分。その子の主治医と振り返りをした。「亡くなったことはとても悲しくつらいこと。それをきちんと受け止めながら、この世でしばらく頑張っていこう。私たちが天国にいくまで、またねと手を合わせよう」許せなかった自分の仕事ぶり。それから私は「相手の気持ちに心を傾けるということは、ただそばにいるだけでいい」と学んだ。いつか天国でまた会いたい。

(玉城恭子、HaNaCoLi代表取締役)