<南風>分断と隔離、信頼と協力


社会
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 新型コロナウイルスは世界で拡大が進み、各国政府も出入国制限や国境封鎖、外出制限をするなど、強硬にさらなる拡大への防止策を進めている。隔週でのこのコラムも、こうしてコロナウイルスについて触れるのは既に4回目となってしまった。つまり、もう2カ月ほど新型コロナウイルスについて日本および世界が大きく揺れている状況が続いているのである。

 史上初めてオリンピックが延期となり、過去最大級の経済ショックが世界に広がる中で、私たちは未来に向けて何を学び、何を考えるべきだろうか。

 14世紀から世界でペストが流行した時、劇場が閉鎖されてリモートワークをしていたシェイクスピアは自宅で詩を書き始めた。当時学生であったニュートンは、大学が閉鎖されて戻っていた実家で、リンゴの木の近くに座って観察している中で重力を見つけた。

 19世紀のコレラ流行は、経済的な不平等や情報の格差や偏りによって、さらなる世界的なコレラ拡大を招いたといわれる。しかしその一方で、ウイルス感染ルート追跡の研究が進み、原因が水ポンプであることを突き止めたといわれる。

 新型コロナウイルスの流行を終息させるために、一時的には物理的な分断や隔離が必要だ。そんな中でも、テクノロジーの進化によって、私たちは離れた相手ともコミュニケーションを取り続けることができる。現に私も、インドに住む妹家族や長野に住む両親と毎日のようにオンラインで顔を見て話をしている。それがたった5分であっても、物理的な距離を越えてお互いをいたわり合う時間がなんだか気持ちが落ち着く。

 この局面を乗り超えるために、世界の最前線で専門家や研究者たちが協力し合っている。分断や隔離の一方で、今だからこそグローバルに信頼し、協力し合うことで、持続的なあり方を創っていく時だ。
(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事 re:terra社長)