<南風>情動調律


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「痛いの痛いのとんでいけ~」息子の大好きなおまじない。気持ちが落ちついて泣きやむ。幼児に抜群の力を発揮するおまじないだ。調べると【情動調律】(【じょうどうちょうりつ】)というらしい。情動調律とは心理学に登場する用語で「子どもの気持ちを察し大人が感情を調律すること。調律とは楽器によく使われる言葉だ。「チューニング」とも表現される。人間の感情にも「チューニング」は大切。感情を意識できない、そして言語化できない幼児期に大人が気持ちを察して言葉にしてあげること。生後8カ月頃から赤ちゃんでもその事を理解し安心するという。そしてその後の社会生活に大きく影響する。

 HaNaCoLiにはメンタル不調を抱えた方が通所している。「自分の気持ちがわからない」と話す人がたくさんいらっしゃる。感情を意識化できないので改善の工夫までに至らない。深く聞いていくと幼い頃に感情に寄り添って表現してくれた大人が周りにいなかったそう。意識化できない感情が心や身体にたまっていき、突然痛みが爆発する。そのような方々と一緒に「大人から始める情動調律」を行っている。特別変わったトレーニングをするのではない。一緒に面談しながら感情を代弁したり、日記をつけてもらって気持ちを振り返ったり、「怒り」「喜び」「寂しさ」など感情の言葉そのものを学んだりする。

 話は変わり新型コロナウイルスの感染が拡大しつつある。今こそ感情を意識化し、自分にできる事を冷静に考える時だ。私は「自分や自分の大切な人」の健康が脅かされるという不安や恐れを感じている。「命を守るため」の自然な感情で少々つらいが健やかな感情だと思う。だから少しの休業を決めた。治療、療養中の皆さまの回復を心から祈ってエールを送りたい。
(玉城恭子、HaNaCoLi代表取締役)