<南風>渡嘉敷島の史跡


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 「ケラマブルー」に代表されるように、慶良間諸島・渡嘉敷島の魅力は何といっても、海を中心とした自然環境ですが、実は島内には数々の歴史的な建物等があります。

 その一つ、島の北側にそびえるニシヤマの頂上には「立火所跡」(ヒータティヤー)があり、この碑は、国立沖縄青年の家(現青少年交流の家)の創立10周年を記念して建立されたものです。そこは琉球王国の進貢船の出入りを首里王府に知らせる番所跡です。本島寄りの航路では残波岬から渡嘉敷島そして首里。西側航路は久米島→渡名喜島→粟国島→座間味島→渡嘉敷島→首里とリレー形式で情報が伝達されたそうです。

 私が青年会の時に、その伝達方法を実証実験しようとする企画があり、月明かりの無い夜に、残波岬でのろし(木材点火)を上げ、それを確認したのちに、ニシヤマ山頂に積み上げた木材に点火して首里の高台に伝えるという内容です。結果は、渡嘉敷島から残波岬の合図はどうにか目視で確認できたので、渡嘉敷側からすぐに点火し、のろしを上げたのですが、残念ながら首里からの確認はできませんでした。那覇市内の人工的な灯りが自然の火の光に勝っていたようです。ただ、琉球王朝時代の通信手段を昭和の時代に再現し、ある程度実証できた喜びはひとしおでした。

 島には渡嘉敷地区の神社の近くにある、村指定有形文化財第1号の「根本家船頭屋敷跡石垣」など多くの史跡が存在し、村教育委員会がガイドブックを発行していて観光客や住民が活用しています。国立公園渡嘉敷島で風光明媚(めいび)な大自然に触れながら、島内をのんびりと、徒歩やレンタル自転車で散策し、海や砂浜だけではなく、島の古(いにしえ)の歴史をひも解くのも一興だと思います。<(参考文献・資料)「渡嘉敷島の史跡」監修・吉川嘉勝氏>
(新垣徹、渡嘉敷村商工会会長)