<南風>一冊の本の可能性


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1980年に創刊された『スポーツグラフィック・ナンバー』(文藝春秋)の記念すべき1000号が3月26日発行された。ナンバーはアスリートの内面を深く捉えた文章と芸術性の高い写真で読者を魅了する、日本一の発行部数を誇る総合スポーツ雑誌である。

 毎号趣向を凝らしていておもしろいのだが、『僕らは本田圭佑を待っている』と銘打った948号(2018年3月15日発売)はとりわけ印象に残っている。3カ月後に迫ったロシアワールドカップへ、本田圭佑は日本代表の最終メンバーに残れるかどうかの当落線上にいた。

 ハリルホジッチ監督との確執やコンディション不良が囁(ささや)かれるなかで、あらゆる逆境を跳ね返し、過去のワールドカップやキャリアを通じて示してきた実績を、関係者とのエピソード、写真や挿絵などを駆使して一冊にまとめ上げている。日本代表には本田が必要不可欠であるという明確なメッセージを強烈に突き刺しており、制作陣のすさまじい熱を感じた。発売から3週間後にハリルホジッチは代表監督を解任され、後任に西野朗が就任した。最終メンバー入りを果たした本田は、本大会では3大会連続ゴールを決めベスト16入りに大きく貢献したのだが、一冊の雑誌が世の中を動かしているのではないかという気さえした。

 私は一冊の本の可能性、沖縄のバスケットボールの無限大の可能性を信じている。沖縄バスケットボール情報誌アウトナンバーは現在は16ページのタブロイド判であるが、将来は雑誌にし、その先に発行部数日本一を目指している。この活動を通じてバスケットボールジャーナリスト、ライター、カメラマンがたくさん輩出されていくだろう。紙媒体だけではなく、ウェブメディア、コミュニティーラジオ、SNSはもちろん、さまざまな形での発信をしていく。
(金谷康平、沖縄バスケットボール情報誌アウトナンバー編集長)