<南風>二つのみやこ


社会
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 「パパラギ」は居酒屋の名前であるが、「白い人」という意味である。南太平洋の島サモアの酋長ツイアビが、はじめてヨーロッパ文明を見たときの演説集であり、白人社会の異常を批評している。

 京都の洛中で生まれて28年、東京で3年、それから沖縄に住んで48年になる。京都(みやこ)のせいか、最も親しみのある名前は宮古(みやこ)であった。

 海の上を飛んでいるような伊良部大橋。最も好きな渡口の浜、美しい白い砂、波は静かで透明度が高く、その先にどこまでも続くエメラルドグリーンの神秘の海。250年前の明和の巨大津波に驚く、打ち上げられた15メートルもの巨石、帯岩。二つの大きな池が、地下でつながって、さらに海まで通じている通り池、自然の造った絶景である。

 京都は歴史がつくって磨きあげたものだ。年がら年中、静かな、盛大な祭りをやっているような雰囲気だ。都をどりが済み桜が終わると緑一色になる。葵(あおい)まつりがあって鴨川に納涼床が出て祇園(ぎおん)祭になり、大文字を焼く。秋になると山は紅くもえ時代祭りである。どちらもパパラギの評する、白人のつくった文明とは異質で、宮古も京都も自然と歴史のつくった風景が素晴らしい。京都は言葉も磨かれているが、宮古で畑へ行くことをパリへ行くというのも楽しい表現だ。

 宮古の人は、率直で親切だ。沖縄に来た頃、ある会社の下地さんという総務部長からとても親切にしていただいて、宮古が好きになった。宮古の人は行動力があって、商売が上手だ。

 京都は、アイデアもユニークで特色のある大企業が多い。しかし、経営者は京都以外の出身が主だ。京都は、源平の昔から歴史の舞台になって満足しているように見える。京都人は、一般に商売が下手で、すぐあきらめる。だから京都人の大企業は数少ない。
(山内眞樹、公認会計士)