<南風>「ワイドー!」の声援受け完走


社会
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 最前線で闘う医療従事者の皆さん。福祉や物流、食品スーパーなど生活インフラを支える人々の存在なくして外出自粛も成り立たないと思うと、これ以上感染を広げないという決意がより強固になる。

 毎年4月開催の宮古島トライアスロンも今年早々と中止を決定した。長い時間をかけて練習してきた選手たちは残念だったであろう。スイム3キロ、バイク157キロ、ラン42・195キロという途方もない距離のレースに私も3度出場した。

 「泳げるか」「バイクこれ使え」トライアスロン挑戦のきっかけは上司や同僚の声掛け。「よし次は宮古島出るぞ」とあれよあれよという間に1500人の大集団の中、号砲と同時に美しい海へと飛び込んでいた。

 6時間かけて島をバイクで1周し、フルマラソンのスタートを切る。すると沿道から「佐久本さんワイドー(がんばれ)!」の熱い声援。実は選手全員の名前が新聞に載っていて、ナンバーを確かめながら市民総出で応援してくれるのだ。これは本当にうれしい。

 だが折り返して残り21キロ。この頃には「全身痛い、なんでこんな辛い思いを、二度と出ないぞ」とネガティブな思考一色。たどり着いた市街地の沿道では酒を酌み交わす光景もちらほら。何十週目かのオトーリでベロベロのお父さんたちが「おい間に合わないぞ。さっさと走れ」と叱咤激励。尻を叩かれ制限時間ギリギリの13時間30分でフィニッシュし、晴れてストロングマンの称号を得られたのだ。

 10年ぶりに完走を果たせた去年の大会は家族や仲間の支えが大きかった。「二度と出ないぞ!」何度そう思っても、やはりフィニッシュの感動は何ものにも代え難い。

 新型コロナウイルス感染症が終息した暁には、島全体が「ワイドー!」の声援であふれる宮古島で、思い切り泳いで、漕いで、走ろう。
(佐久本浩志、OTVアナウンサー)