<南風>「やくざいし」(II)


社会
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 「やくざいし」が集団化し暴走してしまった。慶応大学病院の初期研修医たちが病院長の注意を無視して3月26日に、約40人で宴会を強行。飲んで食べて大声で騒いでいたという。そして、同月31日に研修医1人が新型コロナウイルスに感染した。その後18人の感染も判明した。病院は「医師として許されぬ行為」と断じて、「再発防止に努める」とコメントした。

 初期研修医は、医師になる最初のステップ、指導医のもと、2年間病院の研修プログラムに沿って知識・技術などを習得していく大切な時だ。当然、「人格を磨く」時期でもある。しかし、慶應病院は「やくざ医師」を育ててしまった。これはKO(Knockout)だよ。

 今回の「事案」の核心的な問題は、いわゆる頭がよくて医師になれても「医師としての優れた人間性」を備えているかどうかである。われわれ日本心療内科学会は、「治療的自己の向上」に日々精進し、「人間性を高める」ことに力を注いでいる。「治療的自己」とは、患者様の治療経過に影響を及ぼす医師の医学的知識や診療技術以外の人間的な部分を言う。

 その内容は(1)患者様に信頼感、安心感を与え、何でも話せる治療的信頼関係の確立(2)その苦痛・苦悩を傾聴して「患者様を自分の一部」として共感・共鳴できる(3)患者様を人間として心身両面から多面的に理解できる(4)患者様が打ち明けた話によって人間的な価値評価をせず、診療態度を変えたりしない自我の強さを持っている(5)全人的なチーム医療を効果的に進めることができる(6)患者様を生きた教科書として生涯学習を怠らない―など。

 全ての医療従事者が「治療的自己の向上」に努め、襟を正してより良い医療を構築し、この憎むべき疫病を退治しよう。そして、慶應病院立ち上がれ、頑張れ。

(原信一郎、心療内科医)