<南風>言葉の裏側


社会
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 「何歳まで生きたい?」。大好きなカフェの店主に「まりりん」という人がいる。その人に聞いてみた。相手の人生観をも垣間みることができる魔法の質問だ。

 経営で苦しい時も涙を流して共感してくれた人。だから聞いてみたくなった。「私そもそも生まれてきたくなかったのよ」「え~!」こんな返事されたのは、初めてだ。食材の産地や育て方にもこだわりを持ちメニューを考える。健やかに生きることを大切にしている人が「生まれてきたくなかった」とは驚きだ。

 でも、私はその言葉を聞いてほっとしていた。生き続けることの苦しさを感じていたからだろう。「恭子は生きているだけで素晴らしい」と言われて育った私は、母の死によって生きる意味を考えるようになっていた。「この世からいなくなりたい」という考え自体を持ってはいけない。福祉の仕事をしているから希望にあふれているべきと決めつけていた。「べき」の決めつけが自分で少し苦しかった。

 「生まれたくなかった」と堂々とあっさりと発言する姿に感動さえした。もう少し掘り下げて聞いてみた。まりりんは「人が苦手」なんだそう。世の中で一番怖いのが人間だから生きづらいとも言っていた。自身の苦手を理解した上で、工夫しながら接客の仕事を選び、生きる喜びを感じるご飯を作っている。矛盾しているようだけど、そんな自分を認めて許して前に進んでいく姿に、かっこいいなと感じた。

 仕事柄「死にたい」と話す人に出会うこともよくある。そんな時、これまでは必至に止めることだけを考えていた。でも「死にたいと発言することを受け入れる」ことが「生きること」への希望の第一歩なのだと感じる。そしてそんな言葉を安心して吐き出せる場を作るのが私の使命。「生まれてきたくなかった」は私を悲しみから救う言葉となった。
(玉城恭子、HaNaCoLi代表取締役)