<南風>逆境の中で動き出す社会起業家たち2


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 前回から、新型コロナウイルス感染拡大における社会起業家たちの新たな取り組みについて紹介している。逆境の中での新たな動きは、未来への希望だと確信しているし、未来を思考するヒントになると信じているからだ。

 今回は、ITを活用して社会課題解決に取り組む「Open Dream」というタイの企業を紹介する。2008年に夫婦で創業し、女性が代表を務めるこの企業は、さまざまな社会課題に取り組むサービスを生み出してきている。

 一例として、性教育の知識やコンドーム利用の啓発をするゲーム、豚インフルエンザに対応するために地方コミュニティーで家畜の異常死があったことを、市民が遠隔から携帯電話を使って中央政府に即座に伝える仕組みを構築してきている。

 彼らは今回、COVID―19対策としてSabaidee(サバイディ)というサービスを開発した。Sabaideeは、市民が匿名で症状を報告できる仕組みと、検査待ちの患者のデータを収集することによって、発生地域や潜在的な患者の様子などを把握できるシステムである。患者の発生地域把握だけでなく、行動追跡や症状記録なども行うことにより、患者が陽性と判断された場合に、過去のデータや記録を病院と共有することで、より効率的な診断を可能としている。

 人口7千万人近いタイでの直近(4月27日時点)の新型コロナウイルス感染者数は2938人、死者は54人とされている。スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビューの4月号では、非常に早い段階で官民連携を進めた台湾の事例も掲載されている。台湾の事例も今回のタイの事例も、社会変革において、さまざまなプレーヤーとの連携が必要であることを示している。
(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事 re:terra社長)