<南風>ケニアのごちそう


社会
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 今年の大型連休は私たちにとってこれまでにない試練の時となりました。新型コロナウイルスへの恐怖に打ち勝たなくては、と思います。私も友人とは、終息してから遊びに来て、と約束し、家族には常温保存のてびちや黒糖、シークワーサージュース等を送り、今は自宅で沖縄の味を楽しんでもらうことにしました。

 沖縄にはおいしいものがたくさんあり、何が好きか、と聞かれると悩んでしまいますが、ヒージャー汁は必ず挙げたいです。地域の青年会の初興しで私がうれしそうに食べていたようで、皆さんとても驚いていました。実はケニアでは山羊(やぎ)をよく食べます。ケニア人のソウルフード「ニャマ・チョマ」は、名前のとおり(スワヒリ語でニャマは肉、チョマは焼く)、肉を炭火でじっくりと焼き上げ、小さく切り分け、塩をつけて食べます。肉と一緒に、骨から煮だしたスープもつきます。

 ケニア人が大好きなのはマサイ族が育てる牛や山羊で、サバンナの枯れ草を食べているので肉に臭みがありません(塩だけのケニア流に慣れていた私にとって、むしろヒージャー汁に生のフーチバーが添えられていたのが驚きでした)。山羊は、お祝いの時には丸々一匹を余すところなく調理し、家族、親戚、仲間と一緒に味わう、大切なごちそうなのです。

 SDGsと食の関係では、植物由来の代替肉が話題です。健康志向、動物愛護のみならず、畜産は大量の水や電力等のエネルギー、飼料とその原料の耕作地を必要とし、温室効果ガスの排出もあるため、環境負荷や食糧不足への影響を懸念して、肉の代替品の開発・利用が始まっています。

 栄養がしっかりとれ、一緒に自然のパワーももらえる気がするお肉を食べられなくなるのか。持続可能な畜産・農業へ、一層の技術開発が期待されます。
(佐野景子、JICA沖縄センター長)