<南風>争うは本意ならねど


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 SNS上で『7日間ブックカバーチャレンジ』という遊びがまわってきた。読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は(1)好きな本を1日1冊、7日間投稿(2)本の説明は無しで、表紙画像だけを投稿(3)その都度1人の友達をこのチャレンジに招待するというもの。

 アウトナンバー創刊の際にお世話になったNBA関連書籍を手がける編集者からお話をいただいた。断る理由はない。世の中にはたくさんの良書があり、人々にインスピレーションや学びをもたらしている。もっと多くの人に読まれるべき傑作が人々の心の中に眠っている。私が投稿した7冊は、どれも皆に読んでもらいたいものばかりだが、その中でも『争うは本意ならねど~ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール~』(木村元彦著・集英社インターナショナル)には触れておきたい。

 2007年に川崎フロンターレに所属していた我那覇選手に降りかかったドーピング冤罪事件、あるスポーツ紙の誤報をきっかけにあらぬ方向へ進んでしまった事件の真相がこの本には詳細に書かれている。我那覇選手と担当したドクターの潔白はもちろん、怪我や体調不良などで危険な状態に陥った選手に対して適切な医療処置が施せなくなる危機に対して、Jリーグの全チームドクターたちが立ち上がった。

 12年にサッカー本大賞を受賞したこの本の影響を受けて、私は沖縄バスケットボール情報誌アウトナンバーを始めたと言っても過言ではない。この本がこの世に存在しなかったらと思うとゾッとする。どうしても伝えなくてはいけないものが何事も無かったかのように葬り去られてしまう。世に起こるさまざまな事象を捉えて、伝えるべきことをしっかりと伝えられるメディアでありたいと思う。
(金谷康平、沖縄バスケットボール情報誌アウトナンバー編集長)