<南風>ハハノマスクと母の月


社会
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 今年は「母の日」を「母の月」に。5月10日の母の日に生花店が混雑したり配送が集中したりするのを避けるため、1カ月間に分散して母親への感謝の気持ちを表す新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた花き業界の取り組みだという。

 こんなご時世だが自宅で元気に過ごしている私の母の趣味は手芸。小さなパッチワーク教室を開いていたこともあったが、子どもの頃はそれがあんまり好きではなかった。

 同級生がキャラクターもののバッグなどを買ってもらっているのに、自分はいつも手作りの手提げかばん。手芸店に連れていくのも勘弁してほしかった。生地をじっくり選ぶ時間は母にとってはあっという間だっただろうが、興味もないボタンや毛糸を眺め待たされる身としては退屈で死にそうだった。

 母には普段から娘たちの世話をしてもらっていて、特に今は休園が長引いてそれこそおんぶに抱っこの状態だ。気兼ねなく出かけられた時でさえ、子どもの遊び相手を続けるのは楽じゃない。休校続きの姪(めい)っ子甥(おい)っ子たちも自宅に集まり、半ば室内遊園地の様相を呈しても小言もなくパワフルに面倒を見てくれる母。親となり、今さらその偉大さに気づかされる。

 久しぶりにミシンを引っ張り出し、母はマスク作りに精を出している。器用に折り目が入っていて家族や親戚の分、子ども用もいつの間にか用意していた。小さなハートマークが並んだおばあちゃんの手作りマスクは娘の大のお気に入り。いつも喜んでつけてくれる娘を見て、かつては煙たくも思っていた母の手芸が身に染みてありがたい。

 私と同じく大のビール好き。花を贈る柄でもないし、何よりこっぱずかしいので、「母の月」の間はビールを贈り、ステイホームのストレスを少しでも解消してもらうことにする。
(佐久本浩志、OTVアナウンサー)