<南風>「さんぎょうい」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「変わりないね」

 「薬は同じね」

 「次回は〇月△日ね」

 三言つぶやいてカルテに記載する医師を「さんぎょうい」と言う。患者様は、「ハイ、ハイ、ハイ」と三度答えて診察終了。「楽して儲(もう)かる」医師の働き方。これでは信頼感は得られないし病気も治らない。

 ところで、産業医とは事業所(企業)の従業員の心身の健康の保持・増進を担う医師のことだ。総務・人事や保健師と協力して、作業環境管理、作業管理、体と心の管理を担っている。 現在、新型コロナウイルス感染対策の真っ最中だ。まず、テレワーク、在宅勤務など会社の諸策に踏まえて、「皆が感染し、感染させうる」ことを自覚してもらい、対策に取り組む強い意識を持ってもらう。出社時は、体温測定、手指消毒。有熱者は自宅待機・経過観察。ウイルスを持ち込ませないためだ。

 換気。定期的に行う。くしゃみや咳で飛散する飛沫(ひまつ)、エアロゾルの浮遊を避け、屋外に排出するためだ。消毒。エレベーター、共用パソコンのマウス、キーボード、共用の電話機、複合機のタッチパネル、ドアノブをアルコールや消毒液で拭く。接触感染対策だ。

 マスクを着用し咳エチケット。くしゃみや咳で飛散する飛沫を抑え、また口や鼻に直接触れないためだ。頻回の手洗の励行。これが一番大切。感染拡大の約8割は接触感染だ。有熱者には、保健所と連携して適切な対策を講じる。

 また、自宅待機者や在宅勤務者の体調・メンタル面の聞き取りと対策も重要。毎日、ウイルスとの合戦に大わらわだ。また、実効ある対策にするため職場巡視を行い、衛生委員会でさまざまな議論を行い、アドバイスをする。一大事の時だ。命懸けの仕事だ。「三行医」には務まらないかもしれない。
(原信一郎、心療内科医)