<南風>祖国のために


社会
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 私が、心も体も楽しいと思えるのは、フラダンスをしている時。でも、私たちは「フラダンス」とは言わない。なぜなら、フラはハワイ語で「踊る」という意味だから。

 ハワイの人にとってフラが独自の文化なら、「踊る」ことが沁(し)みついているということだ。たとえば私が何かを伝えようとする時、一番身に合う手段は言葉であり、話したり書いたりすることである。ハワイの人にとっては、言葉以上にフラが適しているのかもしれない。

 フラには恋や愛を歌い、自然や神をたたえるものが多い。しかし時に、抵抗と連帯を呼びかけるためのフラが生まれる。ハワイの人々は大地を愛し、場所や土地に特別な思いを寄せてきた。「聖地」と呼ばれる場所は言うまでもない。ハワイ島のマウナケア山は、その最たる場所である。富士山よりも高い山頂には、すでに13基もの天文台がある。ここに新たに30メートル級の巨大天体望遠鏡が建設されようとしている。そしてこの計画には日本の国立天文台が大きく関わっている。

 神々がすむ場所、自然の生態系が営まれる場所。沖縄の人にとって「御嶽」がそうであるように、そこはハワイ人の根源であり、護(まも)る使命と権利がある。山頂につながる道路を封鎖する座り込みは、まるで辺野古の新基地建設反対運動を見ているようだ。

 マウナケアを護(まも)る運動のために、幾つも曲が作られた。フラの振りが付けられたものもある。私が習ったその曲は、とても美しい。そして力強い。座り込みの現場で作られたこの曲を、想像しながら踊ってみる。

 平和のもと、永遠に空高くはためくアロハの旗、勇敢なる民よ、断固として立ち上がれ、正義のもと、真の主権を取り戻すために。ハワイよ、私の愛する地。

 「沖縄よ」と置き換えて歌ってみる。
(門野里栄子、大学非常勤講師)