<南風>使い込み、横領など(その4)


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 ゴーン氏は、おカネが大好きな経営者だったのではないかと思う。経営者は、大企業でも、中小企業でも、仕事が好きな人が多い。もちろん、お金についても強い関心は持っている。「カネ」に異様な執念を持つゴーン氏と、それを取り巻く暴走を止められなかった経営陣、それが日産事件のイメージだ。

 赤字体質の日産をV字回復させた功績を背景に、会社の私物化が進んだ。社内調査の結果、日産の被害額は350億円以上ともいわれ、有価証券報告書記載義務違反、海外の個人住宅購入金の流用、個人関係の寄付金の会社への付け替え、実態のない海外へのコンサルタント料など多岐にわたる会社の私物化であった。

 2018年11月19日、東京地検特捜部が、金融商品取引法でゴーン氏を逮捕、12月10日起訴し、同月22日の日産臨時取締役会で会長職を解任された。西川社長の解任方針の説明では、ゴーン氏1人に権限が集中しすぎ、負の側面が多かったとのことであった。

 取締役会のチェック機能が果たされている会社では自浄作用が働き、不祥事は起きにくいということは事実が証明している。この自浄作用が働かず、最後の局面に至ったということだ。

 本来なら、ゴーン氏の不正行為について、社内調査で白黒を付け、黒と判断したならば、その時点で、取締役会に解任動議を出し、その後に刑事告発をするのが筋である。それができずに、国家権力(検察)を使って、ゴーン氏を逮捕させ、問題の解決を図った。これが、検察を使ったクーデターと評される理由である。企業にとって、ガバナンスやコンプライアンスは、企業そのもののためにあり、企業が自らの力で不正を摘んでいかなければならない。機能するガバナンスは、絵に描いた餅ではなくて、全役職員の当事者意識である。

(山内眞樹、公認会計士)