<南風>逆境の中で動き出す社会起業家たち4


社会
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 コロナ時代における女性社会起業家たちの新たな取り組みについて今回は、タイのWEAVEという組織を紹介したい。

 WEAVEは少数民族や難民の女性のエンパワメントのために設立された組織。事業の1つとして少数民族や難民の女性への職業訓練や、雇用創出のために手芸・工芸品を製作して販売するなどしている。COVID―19の影響を受けて商品販売ができなくなっただけでなく、それ以前に製作のためにスタッフが工房に来られなくなったり、材料を手に入れることもできなくなったりしたという。

 そんな中、WEAVEは、マスクを手に入れるのが困難な難民の人々に対して、難民自身でマスクを製作して配布する活動を始めた。ここから始まった活動は、「People’s Masks Movement(人々のマスク運動)」プロジェクトとなり、他の社会起業家たちと連携して、難民だけでなく、エッセンシャル・ワーカーなどに提供するなど、活動の幅を広げている。

 このような動きは、タイだけでなく他のASEAN諸国でも多く聞かれる。女性社会起業家たちの下で働く人や、サービスの受益者は、少数民族であったり、難民であったりすることが少なくない。既存の経済社会システムから排除され、インフォーマルセクターで現金収入を得てきていた人たちだ。こうした人々は、COVID―19の経済的影響をより大きく受けていることは明らかであるし、結果として男性よりも女性の方が経済的なダメージを受けている事実がわかった。

 「COVID―19は国際援助のこれまでの成果を30年後退させる」との声を国際機関関係者から聞いた。この30年で存在が認められてきた社会起業家たちの役割が改めて問われている時期だからこそ、彼らの一歩を大事にしていきたい。
(渡邉さやか、AWSEN創設・代表理事 re:terra社長)