<南風>途上国と沖縄をつなぐ


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 前回、JICA沖縄国際センター(OIC)の誕生経緯を振り返りましたが、それ以前からJICAは沖縄において、沖縄の地理的特性や独自の歴史の中で培われた知見や経験を開発途上国の国づくり、人づくりに生かすための技術協力を行っていました。OICの開設により、県の機関や琉球大学などの協力を得て行う農業、水産、保健・医療、環境、海洋分野などの技術研修とともに、センター内で情報処理技術や視聴覚技術、技術移転を効果的に行うため日本語の研修も実施するようになりました。そして宿舎や食堂の整備により、多様な文化圏から来る研修員がストレスを感じずに安心して研修に取り組める環境も整いました。

 正式オープンまで、OICの位置付けを巡ってさまざまな意見があった、と書きましたが、当時の新聞や雑誌には「沖縄の青年向けの研修も行うべき」という議論が載っています。JICAはこれに対し、OICは『国際協力』の場であり、研修員や途上国に対し県民の皆さんが何をしてあげられるのかを考えてほしい、と主張。さらに議論を紐(ひも)解くと、「沖縄らしい『国際交流』」の模索が続いていたことがわかります。

 それから35年。当センターの研修コースは、自治体や公的機関、大学のほか、NGOや民間企業が講師や視察先として参画し、沖縄のリソース(人的資源)がフル活用されています。同時に、例えば県内の看護学生が国際保健を学ぶ機会としてJICA研修に参加する事例も出てきました。一方、国際交流もすっかり根付きました。OICの研修員は、浦添市国際交流協会をはじめ多くの団体の活動を通じて沖縄や日本の文化を体験し、県民の皆さんは研修員の母国について関心を持ってくださいます。

 途上国と沖縄をつなぐ。JICA沖縄の役割をこれからも果たしていきます。
(佐野景子、JICA沖縄センター長)